NEDO 委託事業にて多接合太陽電池の評価・検査技術の開発を推進いたします

2025.03.27
弊社と東京大学先端科学技術研究センターの岡田至崇特任教授らの共同研究グループは、2020年7月からスタートしたNEDO※1 の委託事業である「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発/移動体用太陽電池の研究開発(超高効率モジュール技術開発)」(以下、本事業)にて、2024年度までに移動体向け多接合太陽電池用の性能評価・検査技術に関する基本的な仕様設計や試作、装置製作を行いました。

更に本事業期間終了後の2025年4月以降、研究成果を基に具体的な事業化を目指すための実証実験を進めていきます。
1.研究の概要
本事業では、III-V属化合物半導体※2 を用いた超高効率太陽電池の低コスト化に向けた基板再利用技術であるELO※3 の開発における、非接触式の性能評価技術と検査プロセスの確立を目指し研究開発を行いました(図1)。

ここでは特徴的な多接合型というセル構造に着目し、それぞれのセルで生じるPL※4 を同時にスキャンしインライン検査を可能とする光学系(図2)と、PL 強度が大きく異なる条件に対しても運用できる画像処理技術(図3)の確立を図りました。

これにより、取得した画像から異常点の解析と発生プロセスの特定が可能となり、太陽電池製造における歩留まりの改善や品質の管理を実現します。

図 1. 超高効率太陽電池の基板再利用による低コスト化と検査プロセス


図 2. 開発した装置の光学系まわり

図 3. 3 条件のPL画像と位置照合
2.研究協力体制と評価手法
研究開発においては、本事業の研究開発責任者であるシャープエネルギーソリューション株式会社より各検査条件に併せたサンプル提供を頂き、研究開発の促進と共に、取得画像と異常点との関連性、発生プロセスとの因果関係等を検証することができました。

更に、東京大学の研究開発要素となっているIMM3J※6 ELO技術に対して、作製されたセルサンプルの画像化評価を継続して行い、課題抽出と共に超高効率太陽電池の低コスト化に繋がる成果となりました。
3. アプリケーションと今後の展望
アプリケーションの可能性としては、今後III-V属化合物半導体を用いた超高効率太陽電池(例えば宇宙用途)に加え、昨今開発が目覚ましいペロブスカイト太陽電池※7 と次世代タンデム型太陽電池への応用についても検討していく予定であり、これにより「カーボンニュートラル社会」の実現に寄与することが期待されます。

今後は、それぞれの太陽電池に適応した照明・フィルタ条件の最適化、画像検査システムの構築、AIモデルを活用した製造プロセスへの提案等に取り組んでいきます。

なお、この成果は、NEDOの委託業務の結果得られたものです。

※1 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構。
※2 ガリウムやインジウム、ヒ素などの2種類以上の元素からなる化合物を材料とした半導体。
※3 ELO(Epitaxial Lift-Off)は、母材となるウエハと結晶成⾧により形成された層の間にリリース層を設け、エッチングによりリリース層を除去することで、製品として必要な薄膜のみを得る手法。
※4 PL(Photo Luminescence)は、エネルギーの高い短波⾧の光を照射することにより生じる発光現象。
※5 太陽電池パネルを搭載した実証車 (出典・画像使用許可:シャープエネルギーソリューション株式会社)
※6 IMM3J (Inverted Metamorphic 3-Junction)は、III-V化合物半導体をベースとした逆積み格子不整合型となっている3接合太陽電池の総称。
※7 ペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物を光吸収層に用いた太陽電池。

■各社の説明
《タカノ株式会社》
本事業において基板再生装置開発を目的としたELO量産化技術と、プロセスモニタの要素技術の開発を担当

《東京大学先端科学技術研究センター 新エネルギー分野 岡田研究室》
本事業において高効率化合物セル・モジュール、低コスト化技術(ELO技術開発他)を担当

《シャープエネルギーソリューション株式会社》
本事業の研究開発責任者としてコンソーシアムを主導、化合物セルの高効率化、低コスト化(ELO技術開発を含む)を担当

■ お問い合わせ
タカノ株式会社 技術開発本部
Tel : 0265-85-6237
担当 : 古川 晶一